同じ星空を見た夜

文 / MIMI

「3月11日、雪が降っていました。
夜中になって雪が止み、雲が去った後の空には、今まで見たことがないくらいのたくさんの星がひしめいたいたそうです。津波にのまれ、余震に怯える地上から上空へ、たくさんの命が吸い込まれて昇っていきました。あの夜、空を仰いだ瞳たちにも、同じ星が映っていました。」

...という、深い悲しみをたたえた詩のような文章は、「震災で消えた小さな命展/台湾展」の主催・田中うささんが描いた絵<同じ星空を見た夜>の解説です。

うさぎを保護したことが絵本創作のきっかけとなった田中うささんは、とても動物好きな画家です。ボローニャというコンテストで数多くの賞に輝きました。

震災に遭われたあるご家族のお話です。
「ライオンラビット2羽、インコ3羽、文鳥9羽、金魚2匹、コッピー1匹、合計17匹の家族たちを震災で亡くしました。突然の津波から逃げるのに必死で、写真一枚すら残すことができませんでした。」

うささんは、震災後、復興ボランディアに参加し、「小さな家族」を失った悲しみで涙していた数多くの方たちと出会いました。また、反対に、飼い主が見つからず、ひとりぼっちになった動物たちをお世話しているボランティアの方々とも出会いました。

「慌てて避難したため、小さな家族を連れて逃げることが出来ず、ずっと悔やみ悲しんで泣き続けています。」という被災者の方たちの話を聞いて、心が張り裂けるような悲しみでいっぱいになりました。「小さな家族」は、被災者の方たちにとって、人間の家族同様、大切な存在なのです。

小さな家族を失った被災者の方たちを慰め、そして心の傷を癒せたら…そう思った田中うささんは、ペットたちの思い出を絵の中に記録する、という活動を始めました。その活動には、日本から49名、オランダから2名、イタリアから1名、台湾から6名の画家と絵本作家が参加しました。
被災者の方たちから託された「失われた小さな命の物語」を絵の中に記録し、被災者の方たちの傷ついた心を慰め、そして、ペットたちが生きていたときの飼い主の方たちに対する「信頼と愛」をしるしました。

「助けてあげられなくて、ごめんなさい…ごめんなさい。毎日思い出さない日はありません。」と、田中うささんが描いた絵の飼い主さんは、そう語られます。田中うささんは、ライオンラビット2羽、インコ3羽、文鳥9羽、金魚2匹、コッピー1匹、合計17匹の家族たちを描きました。

「しばわんこ」シリーズ絵本として著名な川浦良枝さんが描いたのは、15歳の柴犬「マルちゃん」。桜の木の下で、やさしそうに微笑んでいます…。飼い主さんは、一ヶ月を過ぎた頃、やっとマルちゃんを見つけ出し、埋葬することが出来たそうです。お空にいるマルちゃんは、最愛のご主人さまへ向けて、きっとこの絵と同じように微笑んでいることでしょう。

もう1人の被災者の方のお話です。「チャドは、15歳の男の子でした。いつも玄関まで迎えに来てくれる、本当にかわいい子でした。3月11日の津波にのまれてしまいました。私は毎日泣いています。」
チャドちゃんというかわいい猫は、私(記者)が飼っている「咪咪」の目と、とてもよく似ていて、心が震えます...。

動物たちは、全身全霊で、私たちを愛してくれます。別れのときは、辛くて、悲しくて、涙の海に溺れてしまいそうになります。でも、きっと、それでいいのでしょう。涙の海は、愛で満ちていて、暖かいはずだから...。